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これはちょっとブラコン気味のお姉ちゃん(19)が、可愛い弟のユウト(16)と、ユウトの先輩でありストーカーの藤堂大樹(19)の(一方的に弟が)危険な日々を日記に綴っていく形で進められる小説です。勿論フィクションであり、実際に管理人にこんな弟はおりませんのであしからず♪





 ■ 2007年1月24日(水)
    ++ 試験期間   

 

世間の大学では概ね試験期間中もしくは終わった頃だと思うが、どうやらユウトの高校でももう少しでテストらしい。つい一年くらい前まで所属していた団体なのに、もうそんな記憶すらおぼろげである。

自慢じゃないがうちの弟はごくごく平凡な頭の持ち主で、賢くもなく馬鹿でもない。成績も常に学年で真ん中あたりを行き来していて、ちょっと優秀なものがあるとすれば国語くらいなものである。ユウトは将来国語の先生になって水泳部の顧問につきたいらしいのだが、今のままの成績では教員採用試験が不安で仕方ない。

そんな風に別に余裕のあるわけではないはずのユウトが、試験期間中だと言うのに居間のリビングで携帯電話ばかりいじっているのを、勿論姉である私はよく思わなかった。

私はといえば昼となく夜となく部屋にこもって、カタカタカタカタと大量のレポートを打ち続けているのに、こいつといえばカチカチと小さなボタンを押す音ばかり響かせおって…!!!

そもそもユウトが元来そんなに携帯電話に執着するような子ではなかったはずである。

そんな私の不満とも八つ当たりともつかぬ気持ちは、本日徹夜してレポートを提出して帰ってきた夕方に爆発した。

弟は試験期前の為に部活が休みで学校が早く終わるのをいいことに、リビングのソファに丸まって(まぁ一応日本史の教科書などを小脇に置いてはいたが読んでいる様子もなく)、けだるげに小さな電話を弄っているのである。

私が持っていたハンドバックで奴の頭を殴りながら文句を言うと、反論はこうだった。



「だって大樹さんが部活停止期間で会えないからって、一日中メール送って来るんだもん。返事返さなくてもどんどん来るし、1時間以上放っておいたら電話かかってくるし…あの人あんま寝なくていい人なのかな?俺おかげで寝不足で…」


またあいつか!!!!

ユウトの顔をよくよく見てみると、本当にその可愛いタレ目の下にはありありと隈が浮かび上がっていた。しかしどう言うわけか別段嫌そうでもないその様子に、私はこのこの天然ぶりが非常に心配になるのだった。

弟の手から携帯を素早く掠め取りその履歴を見てみると、着信履歴からメールの受信ボックスにいたるまで全て「藤堂大樹」と言う堂々とした漢字四文字に埋め尽くされていた。

メールの中にはなにやら画像が添付されているものも少なくないようだったけれど、どうしても私は怖くて開くことができなかったのだ。

昔、こんな話をきいたことがある。ある女の子が別に好きでもなかった男子にしつこく付きまとわれていて、それが嫌で嫌で仕方なかったののだが、その子は気の弱い子だったためになかなかその気持ちを切り出せなかった。いつも当たり障りない返事を返しているうちに、相手の男の子はそれを好意だと勘違いしてある日写真を添付した。その写真には、なんと天を仰いだその少年の性器が…



私は慌てて携帯電話をユウトに着き返した。ユウトはなんだかプンスカと怒っていたが、私の耳には届かなかった。

まさか、ね。


何だかもう叱るきもうせて部屋へ帰って寝ようと思い踵を返した。どうせ弟の成績だ、私のものじゃない。

その時背後でバイブ音が響いた。



「あ、また大樹さん…こんな画像まで送ってきて…こんなん俺も持ってるのに、見せびらかして何が楽しいんだか…」


私は全ての思考を停止させて、ベットへと急いだ。

No.13




 ■ 2006年12月27日(水)
    ++ 聖夜   

 

 ここで私は宣言する。やはり私は弟が大好きで大事だと。
サンタクロースは恋人だなんて古い古い。私のサンタクロースは言うまでもなく弟である。
 12月25日はユウトと過ごした。ちなみに24日は普段と同じ休日だった。

 父と母が仲良くクリスマスディナーに出かけたので、私と弟はサンタの格好をした店員にピザを運んでもらい、コンビニで値下がりしたクリスマスケーキを買って、シャンメリーでひっそりと乾杯していた。てっきり誰かと過ごすのかと思っていたので、私のこのよな暴挙に弟が付き合ってくれたのは非常に喜ばしい事態だった。
 私たちは部屋の照明を落とし、母がコレクションしているアロマキャンドルを数個失敬してきてそれを灯した。雰囲気はいかにもクリスマスである。

「はい、プレゼント」

 弟はそう言うと私にぶっきらぼうなタワーレコードの袋を差し出してきた。弟からクリスマスプレゼントを貰うのなんて数年ぶりだったため、私はそれだけで泣きそうだったが、中身を見て本当に泣いてしまった。

「姉ちゃん最近毎日ビデオ屋通ってるだろ。でも帰ってくるときはいつも元気ないし・・・見たがってたDVD、何だかんだでまだ借りられてないんだろうな〜って思ってさ」

 プレゼントはなんと斉藤工の『BOYS LOVE』のDVDだった。私が11月下旬からコレだけのためにレンタルビデオショップに通っていたことを、弟は気付いていたのである。我弟ながらあなどれない。

 しかし、実は私もうすでにこの映画は鑑賞済みだったおである。にも関わらず、勝山の動向が気になって、夜遅く毎日のようにレンタルビデオに通っていたのだ。

 私はそのことを弟に伏せることにした。勝山のことをなんとなくユウトの耳に入れたくなかったし、何よりもそうやって私のことを気にしていてくれたいたユウトの優しさが嬉しかったからだ。

 そうして私たちはピザとケーキを食べながら、居間の大画面スクリーンで『BOYS LOVE』を鑑賞した。弟は嫌がるかなと思ったが、意外にも仕方ないという風に肩をすくめて付き合ってくれた。途中何度か「うぇ〜」や笑い声も聞こえたが、最終的には私と一緒に登場人物たちのもどかしい想いに同調してくれたようだった。最後は少し悲しそうな顔で「え?コレでお仕舞い??」と目をしばたかせていた。

 私がホールケーキの残りを胃袋に処理している横で、メイキング映像を見ながら弟が恐ろしい発言をした。

「なんかこの「のえる」って役の人、大樹さんに似てる・・・」

私は生クリームを噴きかけ、自分の耳を疑った。弟に急いでお茶をとりに行かせると、その後姿を見ながら首をひねらずにはいられない。

確かに藤堂は綺麗な顔をしているし、美形なほうではあると思うが、斉藤工に似ているだなんてなんとも許しがたい!!!!
何度もDVDのパッケージと脳内の藤堂を見比べて私はあることに気付いた。


そう、なんとなく声が似ているのである。


あと、強いて言えば唇が。
お茶を携えて戻ってきたユウトにその旨を伝えると、どうやら彼も納得してくれたらしく。首を縦に振っていた。

「そういえば、指輪の件だけど・・・」

そういて続いて話を切り出したユウトに私ははっと思い出す。そういえば私、ユウトに、藤堂が青いラインの入った銀色の指輪を持ってないか見ておいてと頼んだのであった。そう、勝山の左手の薬指にあるリングとの関連を推理するために・・・。

「大樹さん持ってたよ。なんか鎖に通していつも首からぶら下げてるみたい」

やっぱり・・・。私は自分の推理が当たった嬉しさと、弟が騙されていた悔しさで、思わず手にしていたフォークを強く握りすぎてしまった。
しかし、その後のユウトの口から出てきたのは、意外な一言だった。

「でもなんか、俺が欲しいんならくれるって・・・いや、勿論別にいらないし丁重に断ったけどさ!」

 まさか!勝山との大切なリングをそんな気安くユウトにあげるだなんて・・・それはどう考えてもおかしいのではないだろうか。
 
 これはますます私には意味のわからない状態になってきた。

 果たして藤堂はまだ勝山と関係があるんだろうか。

 そしてユウトに対する想いは本物なのかどうなのか。

 あいつは本当に何を考えているかわからない。

 2006年ももう終わると言うのに、どうやらユウトの身の安全やなにやらは保障される見込みが薄そうだ・・・

 勝負は来年に持越しらしい・・・

No.12




 ■ 2006年12月13日(水)
    ++ 不安襲撃   

 

なんというか、見なきゃよかったな、って思うようなものを見てしまった。

最近大学の課題に追われて忙しく、あまりユウトの相手をしていなかった。まぁそれだけ彼女と別れてからのユウトの身辺は穏やかと言うこともあるのだが。取りあえず藤堂のプレゼント作戦だけは今でも継続中(昨日は私の分もとケーキを二個貰ってきた)のようだが、あの男にそれ以外の動きは見えない。

そんある日のできごとだった。

いつもは家から自転車で行けるところ以外はでかけない私だが、今日はそろそろ寒さも本格化してきたし、素敵なアウターでも見に行こうかと思い人で賑わう町の方まで出て行った。そこで適当にアウターを物色し、一息つくためにスターバックスへ入店したときのことである。

2階席の窓際を陣取って、暖かなチョコレートミントモカに手を伸ばした私は思わずそれを取り落としかけた。

なんと、眼下に広がる歩道を、藤堂と勝山が二人で連れ立って歩いているのである。

しかも何だか二人とも非常に楽しそうだ。

私の脳裏には卒業式のあのドラマチックな別れのシーンが展開していた。

しかし、私が2階から見下ろす二人には、どうも別れたカップルの気まずさなどは見当たらなかった。

それよりもむしろちょっと敏感な人ならば「え?あの二人って…ゲイカップル??」思うような雰囲気をかもし出している。

さて、どうしたものか。

私は、私の気の迷いか気にしすぎであることを祈りながら、それでもそんな二人から目が離せなかった。

彼らが視界から消えるまでずっと凝視し続けていた。

そしてとうとう、小さくなっていく彼らは、そっと、手を繋いだ。

ちょっと待ってくれ。

藤堂はうちの弟のユウトが好きなんじゃないのか。

勿論私はそんなの許しはしないけれど、だけどこうも軽々と違う男に乗り換えられると…なんと言ったらいいか、怒りが込み上げてくる。

しかも奴は今でもユウトへのプレゼンオ攻撃は健在なのだ。

二股なんて許せない。

しかも、しかも私の直感では、ユウトは最近藤堂に少なからずの好意を抱いている。

しかし、私がしゃしゃり出る問題じゃないこともわかっている。

大好きなチョコレートミントモカはちっとも美味しく感じられなかった。


さっき借りていたDVDを借りにまた勝山のバイトするレンタルビデオショップへと出向いた。(ちなみにまだ斉藤工のBOYS LOVEは借りることができないでいる)

勝山は今日も無邪気な笑顔で私を迎えてくれた。気のせいかいつもよりも期限がいいくらいだった。藤堂と会ったからだろうか。

私は自分の笑顔が凍りついていないか不安でしかたなかった。

勝山の男らしい無骨じみた左手の薬指では、相変わらず銀色のリングが光っている。

明日ユウトに聞いてみよう。

藤堂大樹は青いラインと入った銀色の指輪を持っていないかを。

No.11




 ■ 2006年12月5日(火)
    ++ そんなもの貰っちゃいけません!!   

 

世間はすっかりクリスマスモード全開のようだ。私は暗くなってから一人で街を歩くたびにため息をついてしまう。
別にプレゼントを贈る相手もいないので、お金が飛んでいく心配はないし、何を買おうか悩む必要もないから楽と言えば楽なのだが。
いっそクリスマスとイブはバイトでも入れてしまおうかとも思ったけれど、当然のように店長が「24・25はきみは入れないよね〜」とか言ってくるので、そこで力いっぱい否定するのも癪だったからコクリとすまなそうに頷いてしまった。

「姉ちゃんどうしよう…」

今でだらだらテレビを見ているとユウトが私の隣に座りだした。狭くもないソファーだったので、私は文句も垂れずに少しずれて弟のスペースを作る。
ユウトは両親がキッチンの方で二人仲良く夕飯の準備をしているのを確認して、そっと私に耳打ちした。

「クリスマス、大樹さんの家に招待された」

私は飲んでいたココアを噴いてしまった。

「ゲッ!きたねぇな!!落ち着けよ!!勿論断ったんだから…」

断ったというときの弟の顔が、なんだかひどく痛みを堪えているそれに見えて、私は背中に寒いものを感じた。

「大体最近大樹さんちょっとおかしいんだよ…俺がモトカノと別れたばっかだから気を使ってくれているんだとは思うけど…プレゼントばっかでさ」

藤堂大樹がおかしいのは今に始まった話ではないが、最近の奴の行動は確かに目に余る。何せ毎日のようにちょこちょことしたプレゼントをユウトに押し付けてくるのである。UFOキャッチャーの景品(勿論クリスマス限定チック)や大人買いチロルチョコなどのお菓子類、弟の好きな映画の廉価版DVDなど、金額にすればたいしたことはないが、それが毎日続くのだからすごい。
うちの弟は本当に本当に押しに弱い性格らしく、馬鹿正直にそれらを全部貰って着てしまうのだ。
そして私はそういったプレゼント類を一々全部チェックして盗聴器や隠しカメラがついていないか確かめる。まぁ、今のところそんな物騒なものは出てきていないが。(そしてあったとしても報復が怖くて取り外したりはできないが)

「あんなにプレゼント貰ってちゃ、クリスマスに一緒に過ごすならなんかお返ししなきゃじゃん。俺今金ないし、そういうのって…その…なんか俺らがやるの変じゃね?」

あぁなるほどね。私はそのときのユウトの言葉でピンときた。藤堂は確か現在実家を出て一人暮らし。そんな場所にクリスマスだからとユウトを誘い込んで何をするかと思えば…今までのプレゼントのお返しとして体でも強請る気だったのだろう。ははぁん、そうきたか。普通に襲えばさすがのユウトでも嫌がるだろうが阿呆で義理堅く押しに弱いうちの弟のことだ、今までのたくさんの贈り物のお礼と言えば隙を見せ体を許してしまうかもしれない。いや、うちの馬鹿で可愛い弟ならきっとそうしてしまう!!!

私は一人その考えに行き当たって眩暈を感じた。

弟は私がトリップしているのに気付くと、大げさにため息をついて、テーブルの上に置いてあった大人買いチロルチョコに手を伸ばした。それは勿論ユウトの大好きなきなこもち味である。

「それにさ、俺実はあの人の好きなものとか何も知らないんだ。あっちは俺の好きなものとかどういうわけか知ってて、わざわざそれを選んでくれるのに」

私は自分の耳を疑った。

「いつかは何かお礼しなきゃいけいないだろ?そういうとき、俺どうすればいいんだろう」

まるで独り言のようにぼそぼそと喋るユウト。その横顔がなんとなく、恋する乙女のそれに見え、私は急いで頭を振った。







その夜22時過ぎ、私は24時までに返さなくてはならないDVDがあったことを思い出し、急いで部屋着からちょっとまともな格好に着替えて家を出た。ちなみに借りていたDVDとは『アナザーカントリー』『青い棘』『青い春』の3本だ。
私は競輪選手並の動きで自転車を漕ぎ、人気の少ない裏道を通ってレンタルショップへと急いだ。裏道を通ったおかげで、鬱陶しいネオンは見ずにすんだ。

レンタルショップに着いたころ、すっかり手は冷たくなっていて、こんなことならユウトにお願いすればよかったと心底悔やんだ。
ついでに最近レンタルを始めた斉藤工主演の『BOYS LOVE』があれば(どういうわけか私の住む地区には他には腐女子がいるらしく、レンタル初日から今まで常に貸し出し中である)借りて帰ろうかなとか考えつつ、カウンターに例の3本を突き出した。

「…アレ?この名前…ねぇ!!覚えてない!?俺だよ、勝山!!高3で同じクラスの!!」

私はほぼスッピンの顔を隠すためにうつむいていたが、その名を聞いて勢いよく顔を上げた。勝山。その名には覚えがる。そう、天敵藤堂大樹の元恋人(男)であり私が実は淡い想いを抱いていた名前ではないか。

「やっぱり!懐かしいな〜俺最近ここでバイト始めたんだよね!!」

勝山は店長が睨んでいることに気付いているのかいないのか、人懐っこい笑顔で話しかけてくる。高校時代は不良のそれにも見えた彼の明るい髪色は、大学になり広い世界を見た今となっては、他の誰とも変わらず映った。
私は柄にもなく借りたDVDのタイトルたちに後悔していた。あとは彼がその詳細に気付かないのを祈るばかりだが、ゲイである勝山だ、そうれはどうだろう。

それとなく当たり障りのない挨拶をしてその場を離れようとしたら、彼がひどくがっかりしたような顔をしたので、常連なのでまた来るといってしまった。何かあったのだろうか、高校時代の懐かしい思い出に、すがりたい気分だったのかもしれない。
なんとなく目がいった彼の男にしては綺麗な左手の薬指には、青いラインが涼しげな、銀色のリングがはまっていた。

No.10




 ■ 2006年11月29日(水)
    ++ ユウトが彼女と別れちゃったよ!!   

 

 こんな時間に日記を更新する私を許していただきたい。ちなみに勿論自室のマイパソからの更新ではあるのだが、なんと現在私の背後では、可愛い弟ユウトが泣きつかれて眠っている。
 なんでそんな頭痛が起こるほど泣きじゃくっていたかと言うと、タイトルから推測していただければ一目瞭然なのだが、なんとユウトが勝気で可愛い彼女さんと別れてしまったのだ。

 原因は、ユウト曰く彼女の方にあるらしい。まぁあくまでユウト曰くなので100%本気にはできないが、どうも彼女が変態の先輩に言い寄られているような彼氏には愛想が尽きたらしく、浮気してしまったらしい。しかも相手はなんとユウトの友達だとか違うとか。嗚咽の中から聞き取れる僅かな言葉では、全てを正確に把握することは不可能だったが、どうやらそんなようなあらましらしい。これが本当ならうちの弟はつくづく可哀想な少年と言うことになる。何せ2006年も残すところあと一月と言うところで彼女と友達を同時に失ってしまったのだから…残ったのがストーカーな先輩と腐女子の姉では眼も当てられない。元旦には弟の2007年中の幸運(特に恋愛運)を祈願しに行こうと思う。

 あ、ちなみにもう既に自分の恋愛運に関しては達観してしまっているので祈る必要なし。

 全く、女心と秋の空とはよく言った話である。この間まで妥当藤堂に燃えていたユウトの元彼女に、一体全体何があったというのだろう。ユウトの話では(ユウトも噂か何かで聞いたのだろうが)元彼女さんはそのユウトの友達らしき某くんにかなり強引にせまられていたらしい。私も女だからわかるが、彼氏が浮気(?)などをしてしまったときに、強烈にアプローチしてくる相手があれば勿論そちらになびいてしまうこともあるだろう。
 まぁ、ストーカーをストーカーとも思っていないようなユウトの態度では、彼女(元)が愛想を尽かすのも納得と言う話である。

是非彼女には幸せになっていただきたいものだ。



 そして、何より恐ろしいのはこれからである。


 先ほど、ユウトが眠ったあと、もう真夜中もとうに過ぎたくらいだったと思うが、弟の携帯に着信が入っていた。(私は弟のバイブの回数でそれが着信かメールかわかってしまうほど弟が大好きだ)

 憔悴しきって爆睡したユウトはそれには全く気付くことはなかった。ただその後mp約3分おきに10回着信が入っていた。

 着信バイブがようやっと静かになったと思ったら、なんと今度はメールが届いたようだった。しかもこれまた短い間隔を空けて何通も何通も届いていた。

 さすがの私も不審に思って、弟を愛する姉の権限で彼の携帯を覗かせていただくことにした。もしかして別れた彼女からの復縁請求メールとかだったら、急いでコイツを起こさなければならないじゃないか、そんなちょっとしたおせっかいが切欠だった。


 しかし、メールは元彼女ちゃんからではなかった。勿論着信も違った。むしろ女の子からでさえなかった。


















 やはりと言うかなんと言うか、全部藤堂大樹からだった。






 どれもこれも落ち込んでいるだろうユウトを励ますようなメールだった。アイツの腐った脳みその何処のどの部分をかき回して抽出すれば、こんな素晴らしい文章が生まれるのだろうと思うほどの文面に、逆に私が恥ずかしかった。

 


 目覚めたときのユウトの反応が心配なようでひどく恐ろしい。

No.9



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