| とてつもなくすげえことをやりてえんだ、と彼は言った。 「具体的に言っとくれる」 「やだなあしげ。すげえことってのは、決まってないからそう言えるんだよ決まってたら俺の想像の範囲内ってことだろ? 俺は俺の思いつかないことをやりたいわけー」 「ほんなら、さっさとやってみい、ほれほれ」 ぐりぐり、と肘で突いてやると、山口はやめろよー、とやる気のない悲鳴を上げた。ここ数日の気温の高さ、それと同じくらい続いた退屈にやられて、二人とも簡単なやり取りでさえ疲れを覚える。 二人がぐったりしているのは、二人の住む場所からは車ですぐの所に、広めの児童公園である。日陰になっているベンチに腰掛け、売っていたアイスキャンデーを舐めながらのんびり過ごしている。アイスキャンデーは甘いし、冷たい。しかし身体は暑いしだるい。 子供の姿はほとんどなかった。記録的真夏日とされるこの日に、子供を外で遊ばせる親も少ないのかもしれない。そもそも外で遊ぶ子供が少ないのかもしれないが。 そんな日に二人が外に出ているのは、家にいられなくなったからに他ならない。二人は数時間前、自宅のクーラーが今朝になって突然壊れ、「こりゃ修理に一週間かかりますねえ」という悪魔の宣告を受けたばかりだ。 涼しくない、寧ろ蒸し暑い家にいるよりも、風があり日陰のある外の方が幾分マシじゃねえの? と考え、同居人一人を残して車を走らせここまできた。 確かにあの家よりは涼しい。しかし、クーラーの涼しさにはほど遠かった。 「……思いつかないことはね、ある日突然やってくるんだよ」 山口は両手を拡げて空を仰いだ。 「空から古代遺産引っさげた女の子でも降ってくるんか?」 「いいねえ、何か降ってこねえかな……降る……そうだ雨、雨降らないかな」山口は両腕を下ろした。 「雨。そうやねえ、最近降っとらんからねえ」 「梅雨はいつ来たんだよ、いつ去ったんだよ……別に雨は好きじゃないけど」 「僕もそんなに好かんなあ、そやけどおてんとさんばっかなんは勘弁」 沈黙。近くの樹木からセミの泣き声がする。ミンミンやらカナカナやら、文字にしにくい鳴き声やら。 一分と経たぬうちに、山口が立ち上がった。アイスキャンデーを半分噛み砕き、 「あー! なんつうかこう、すげえこと! 起これ! つうか起こせ神様! いまなら何だって受け入れてやらあー!」 「自分神様なんぞ信じとらんくせに……」 地道にアイスキャンデーを舐めながら城島が一言ぼやく。
――――それと、空が眩く光ったのはほぼ同時であった。
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うわーごめんなさいごめんなさい。とち狂ったか。 続きます? |
..2007/7/28(土) No.2 |
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