2008年7月19日(土)
人殺しのおはなし28
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| 「何だ此処、岩が邪魔で…」
「壊せそんなもの。」
ガンッ。
リーナスは容赦なく立ち塞がる岩を蹴り壊した。 後ろではスタンがハラハラしながら見守っている。
「もし此処が壊れたらどうする!」
「知らん。私の行く手を阻むのが悪い。岩風情が」
チ、と舌打ちして、リーナスは歩を進める。 後ろでフィリアが目を輝かせていたのは誰も知らない。
暫くして辿り着いたドアは、恐らく素手ではこじ開けられまい、 ボロくなって立て付けの悪いものだった。
「…これを蹴りあけたら…多分本当に壊れるだろうな。」
リーナスは腕を組んだ。 ふと振り返ると、スタンが居ない。
「っスタン!?」
「おーい、リーナスー!」
満面の笑顔を振り撒いて、スタンは手に持った何かを翳した。
「これ、つるはし!あっちの部屋にあったの見付けたんだ!」
「勝手な行動をするな!」
怒鳴るリオンにしょげてみせるが、すぐに笑顔になってリーナスにつるはしを渡す。
「…お前は犬並の嗅覚を持ってるんだな。」
褒めているのかいないのかイマイチ判らないコメントをして、リーナスは受け取る。 意外と重たい。 確かに、これならドアを壊せそうだ。
「俺じゃ何処ぶっ叩いて良いのか判んないからさ! リーナスなら出来るだろ?」
「……当たり前だ。 この私が、その程度の事が出来ないとでも?」
フン、と言うと、スタンはにっこりと笑った。
「だから、さ。頼むよ。な!」
「…っく、ホントに、こんなトコに、 何か、あるって言うのかよ!?」
「うーるさいわね! ごちゃごちゃ言ってる間があったら、さっさと登りなさいよ体力バカ!」
「体力バカって何だよ!?」
「お前だスカタン。早く登って」
リーナスが手を差し延べると、その手を掴んでスタンが必死に登りきった。 息が上がっているのは、スタンとフィリアだけだ。
「こんな所でへばっている間はないぞ、スタン」
「マリーさん…何でそんなに元気なんですか」
「楽しいじゃないか!」
にっこり言うマリーに、スタンはがっくりと肩を落とす。 リーナスとリオンは、さっさと登って待機していた。
「ツタ一本で体持ち上げるの、きついんだぞ!」
「アンタが根性ないだけじゃないの?」
「お宝があったらどんな辛い状況でも乗り越えられるお前は楽で良いよな!」
「まぁっ!!無限の力があるといってよね!」
ルーティとスタンが言い争っている間に、 リーナスとフィリアは耳を澄ませていた。
「…近い」
「近い?先刻言っていた声の事か?」
ああ、 とリーナスが頷くと、スタンはパッと顔を輝かせた。
「早く行こうぜ!」
「アンタは極端なのよ!」
ルーティに後頭部を叩かれぶすくれるスタンだが、 これから見えてくるであろう何かに、揺るがぬ期待はあった。
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No.72 |
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